2023.09.23
カスタマーサティスファクション(顧客満足)という言葉がある。
顧客に満足いく製品(建物)を引き渡すことは、顧客満足の最低限の基準となろう。
それ以前の問題として顧客満足どころか不具合や顧客が不満に思うようなことは、早期に改善しなくてはならない。
しかしながら、工事現場には原価というものがある。
顧客の為に際限なく対応していたらお金がいくらあっても足りない。
そこに工事現場のジレンマがある。
そのジレンマと戦うゼネコン社員(アルノ)の心の内をブログにしてみた。
設計図不備により顧客が不便を感じる
設計図の不備により顧客に不便を感じさせてしまうことがある。
例えば次のような例だ。
エントランスの天井内に外調機という空調機械を納めるような設計図になっていた。
それに気づき、機械室を設けるなりして外調機を移動しないと、このままでは不具合になってしまうと設計担当者に提案した。
しかし、設計担当者は本気になって考えず(そもそも機械室にそんなスペースがなかったのだが)結局そのまま施工するようになってしまい案の定、施工後にエントランスから騒音が鳴り響くようになってしまった。
昨今の設計担当者は時間がなく、設計図の内容がよく検討されてない場合が多い。
施工者は施工側の視点で設計図の内容に不備や不便がないかを確認、検討するのだが、その改善のための提案は、さまざまな理由から受け入れられない場合も多い。
施工者としては、お金がかからない図面の内に修正をしておきたいものなのだが。
設計図にないことはしたくないサブコン
一方、サブコンは基本的に設計図と違うことはしたくない。
なぜならお金がかかるから。
施工者が設計図の内容から善意で変更の提案をする場合、設計者は「施工者が提案して勝手にするのだから、お金はかからないでいいよね」というスタンスになりがちだ。
だからサブコンは、ゼネコンが顧客の使い勝手を考えて変更しようとすると嫌な顔をする場合が多い。
ましてサブコンからは、お金がかかるような顧客の使い勝手を考えた改善提案はまず上がってこない。
これは、サブコンの意識が低いとか、顧客志向が薄いなどという話ではなく、請負体制の構造上いたしかたないことだ。
工事はお金がかかる以上、変更は極力したくないのはもっともな話しである。
顧客が使いやすいようにしたいアルノ
私としては、顧客の立場に立って、極力使い勝手を良くしたいという思いがある。
その思いを踏まえたうえで、実際にやる、やらないを判断をするのには線引きが必要である。
線引きの基準としてはまず、変更しないと不具合となる、変更すれば改善される、という場合だ。
これは、極力行わなければならないが、お金や設計事務所のプライド、何をどこまで変更するか等、さまざまな要素を検討したうえで行わなければならない。
もう一つは、やならなくてもいいがやったほうがいいという場合である。
これはお金と相談してどこで線引きをすればいいかを判断すればいいので割とたやすい。
これらの改善提案は施工者ならではの視点の場合が多いので、設計事務所や施主にはなかなか気づかない点である。
そうである以上、ゼネコンの実力いかんによって建物の品質が決まるということになってしまうのだ。
結局、設計図がきちんとしていれば問題ないのだが、設計図のレベルが年々下がってきている以上、ゼネコンの技術力、提案力が建物の品質を決定する最後の生命線となってきている。
その生命線ですら崩れつつある昨今、それが崩壊し、最低限度の品質を確保できなくなると、その時は悲しいかなニュースを賑わすことになる。
この記事はこの人が書いています。
施工管理技士アルノ
1級建築施工管理技士
1級電気工事施工管理技士
1級管工事施工管理技士
1級電気通信工事施工管理技士の資格を取得。
現場監督としての体験、施工監視技士試験の勉強法、
2度の転職経験から得た建設業における転職ノウハウを紹介しています。
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