2023.08.19
新築した建物は、数々の検査に合格しなければ使用することができない。
その中でも特に重要な検査のひとつが消防署による検査、いわゆる消防検査だ。
消防検査がどれくらい厳しいものか。
消防署の担当者の特徴などについて述べていきたい。
消防の絶大な権力
建物は消防法に合致した内容で消防設備が備わっていないと使用することができない。
そして消防法に合致しているかどうかを検査するのが消防検査だ。
建物に電気が付こうが、水が出ようが、空調システムが完璧でも消防設備に不備がれば、消防検査に合格せず、建物を使用できないのだ。
消防署にはそれだけの力がある。
また、消防法や消防法施行令などは、消防設備等の大まかな内容から、割と細かいシステムまで書かれている。
しかし、それでも網羅できない内容が現場では多々ある。
その場合の最終判断は各自治体の消防署の判断となる。
その判断次第で大きく工事金額にかかわることがある。
それだけに消防署の担当者を納得させられるかどうかは、施工者にとって大きな問題だ。
したがって消防署の担当者とうまく協議をし、なるべくお金がかからないようにすることが施工者にとっては大切になってくる。
地方の消防署の意地
前述のように最後の判断は各自治体の消防署の判断となる。
そこにおいて特に地方の消防署における打ち合わせ時の禁句が発生する。
「東京ではこうやりました」
地方の消防署にはプライドがある。
このワードをいうと地方の消防署はへそを曲げる。
つまり「東京消防庁でどうやろうと関係ない、ウチではこうしなくてはならない」となるわけだ。
それはどの地域でも同じで福島県で「仙台では・・・」とか、兵庫県で「大阪では・・・」とか、熊本で「博多では・・・」などは同様に禁句となる。
相手は人間なので自尊心をくすぐり、良好な関係を築くことが大切なのである。
名物消防担当者
各県には、一度いったことを断固として曲げない「泣く子もだまる名物担当者」が一人はいる。
一度口にすると後からどんなに法的根拠を提示しようが、道理を示そうが無駄である。
そういう人は最初の打ち合わせが大切である。
丁寧に根拠を示し、お伺いをする姿勢、へそを曲げないようにする話の持っていきかたが大切である。
時には雑談を交え、人間関係を構築することも行う。
どうしてそこまでするのか。
冒頭にも述べたように、消防検査に通らなければ建物が使用できないからである。
消防署の弱点
そんな権力者消防署にも弱点がある。
その例を2例示そう。
ある地方自治体の公共工事で、施主である市役所の担当者と打ち合わせ時に「建物の使用方法と消防設備について認められない」との消防署の見解を伝えた。
すると市役所の担当者が「そんなこと言うやつは消防の誰だ、直接文句言ってやる」となった。
市役所の重鎮の言葉は、消防でも一目置かれるのだろうか。
またある地方自治体の民間工事で、地元の財閥が施主の工事を担当したとき、同じように消防設備について認められないとの消防署の見解を施主の担当者につたえた。
すると施主の担当者が「税金たくさん納めているのに、そんなこと言うやつは消防の誰だ、直接文句言ってやる」となった。
地元の財閥は消防に口が効くのだろうか。
竣工後の消防点検は甘い
消防検査までは、とんでもなく厳しい消防も、竣工後の点検には極端に甘い。
竣工後には定期的に消防設備の点検報告が義務づけられているのだが、その報告率は5割前後だ。
しかし、報告をしていなくても建物が使用できなくなることはない。
消火器の有効期限が切れていようが、屋内消火栓の前に物が置かれていようが、お構いなしの建物もよくみかける。
どうせなら、竣工後も同じく厳しく、徹底してほしいものだ。
消防点検報告が甘いわけ
なぜ、消防点検報告はそのように甘いのだろうか。
そのわけを推察すると、建物が引き渡され、営業をしているところを使用できなくすると、裁判をおこされ営業補償を要求される可能性がある等の理由があるからではないだろうか。
したがって、工事中の検査を徹底的に厳しくして消防設備の性能を確保しようということなのだろう。
消防としても対応が難しいようだ。
消防設備は人命にかかわるので、大切であることは誰もが認めるところだ。
消防検査もしっかり受検したいという気持ちもある。
ただ、施工者としては、できれば現場の事情にある程度沿った方向で相談に乗ってほしいというのが本音でもある。
この記事はこの人が書いています。
施工管理技士アルノ
1級建築施工管理技士
1級電気工事施工管理技士
1級管工事施工管理技士
1級電気通信工事施工管理技士の資格を取得。
現場監督としての体験、施工監視技士試験の勉強法、
2度の転職経験から得た建設業における転職ノウハウを紹介しています。
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